初戦審査 審査委員座談会 2026

2026

2026年5月21日、都内某所。写真甲子園2026の初戦審査が終了した直後、昨年と同様、5名の審査委員によるアフタートークが開催されました。来年の写真甲子園に向けたヒントが満載です。ぜひお読みください。

野村 恵子(写真家)

代表審査委員
野村 恵子 (写真家)

鵜川 真由子(写真家)

審査委員
鵜川 真由子 (写真家)

浅田 政志(写真家)

審査委員
浅田 政志 (写真家)

GOTO AKI(写真家)

審査委員
GOTO AKI (写真家)

小髙 美穂(キュレーター)

審査委員
小髙 美穂 (キュレーター)

たったいま2026年写真甲子園の初戦審査が終わり、全国463校の中から80校がブロックごとに選ばれました。
残念ながらブロック審査会に進めなかった学校へ向けてのメッセージや、来年また写真甲子園に応募する際に役立つアドバイスなど、ざっくばらんなお話をお聞かせいただけますでしょうか?

野村

今年も本当に良い作品がたくさんありました。

最初にひとつ言っておきたいのは、ブロック審査会に進んだから良い作品で、進めなかったから良い作品ではなかったという単純な話だけでもないということ。

実際、九州・沖縄ブロックや近畿ブロックなど、ブロック全体のレベルがたいへん高くて、いい作品が多かった。すごくいい作品だけど、でも、残念ながらブロック審査会までちょっと進めきれなかった作品がありました。どんな人が撮ったのか、どんなチームで制作したのか、お会いしたかったなって思う作品が本当にたくさんありました。正直、ブロックごとの作品レベルに少し差があったりもしたので、ブロック審査会に進めなかったから作品が全く良くなかったのかと言うと、一概にそういうことではありません。

Keyword 01 「本気」

鵜川 真由子(写真家)

何かがすごく見えてくる作品が選ばれているかな(鵜川)

そのように一筋縄ではいかない初戦審査会のなかで、最終的にブロック審査会へ進んだ学校と進めなかった学校の違いはどんなところにあったのでしょうか?

鵜川

去年も言ったんですけど、この作品を作るのにこれだけのことをやっているんだなとか、こういう思いでやっているんだなみたいなもの、それは技術やメッセージでもいいんですけど、やっぱり何かがすごく見えてくる作品が選ばれているかなと思いました。

野村

熱意というか本気度は写真作品を通してこちらに伝わってくるのでね、そこはしっかりと受け止めています。また、その反対もどこかで伝わってきますからね。

浅田

カメラやプリンターなど仮に機材に差があったとしても、写真に勢いがあったり、やる気を感じられたり、楽しんでやっていたり、熱い思いがあったりしたら、もう画像が多少荒かろうが選ばれると思うんですよね。

鵜川

そういったところが実際ブロック審査会に進んでいるという面もありますよね。

GOTO

技術的なところでは、ピントが合っていたらいいのにとか、露出もちょっと白飛びを抑えていたらいいのにとか、そういう基本的な撮影技術ができている学校がブロック審査会に進んだ印象があったかな。

逆に言うと、技術的に今回できなかったところはすぐ修正できる部分でもあるので、自分たちの伸びしろだと思って、より質の高い作品につなげてほしいなと思いました。

Keyword 02 「題材」

浅田 政志(写真家)

半径三メートルの世界でも作品はできる(浅田)

まずは熱量のほかに技術的なお話も少し出てきましたが、今回の応募作品の傾向や特徴のようなものから見て、どんなことが言えそうでしょうか?

浅田

去年も話題になっていましたが、お花だけを撮った写真作品は少し減りましたね。花に限らず、空だけとか、動物だけとか。花は綺麗で本当に良いんだけども、そういった写真作品を見ていると、花を撮りたくて撮ったんじゃなくて、もう撮るものがないし、でも作品を応募しなきゃいけないし、とりあえず手近な花でも撮っておくか......みたいな雰囲気をすごく感じてしまうんです。だから、すごく熱い思いを持って花を撮っているのならいいんだけど、まあこれでいいかなというような作品はやっぱり弱いですよね。

鵜川

それこそ逆に、その身近なお花を自分なりの見方で撮って選ばれる作品が出てきて欲しいですよね。

浅田

確かにお花の写真でも突き詰めると、それはそれでもちろんありでしょうね。ただ、それが逃げる対象になってくるとどうしても弱いというだけの話で。

お花という題材が象徴的な話として出ていますが、他にはどうでしょうか?

浅田

内向きな暗い写真が少なくなってきた傾向はありますね。でも、もっとダークなものでもいいと思います。以前はもっと多かったんですけどね。

野村

暗い作品は今回もありましたが、以前その傾向が強かったというのはやはり、コロナ禍の影響も大きかったかもしれないですよね。

でも、写真甲子園はどんな作品でもいいんですよ。やりたいことを思い切りやっていただければ。

浅田

身近なところで絵になるところとかないし、なんか撮れないなあなどと思っているかもしれないけど、セルフポ-トレイトを撮るだけでも多分作品になるし。自分の親とか友達だけとかでも。どういうふうにそれを見るか、どういう風に撮るかだけであって、本当に半径三メートルの世界でも作品はできると思う。

Keyword 03 「向き合う」

小髙 美穂(キュレーター)

これが私たちのカラーだっていうところを相談し合って(小髙)

題材についてのお話が出ましたが、では、その題材への対峙の仕方ということではいかがでしょうか?

浅田

同じような写真ばっかりだとブロック審査会に進めないんじゃないかなと思っています。そのような写真になってしまう場合、3人で8枚1組の作品をどうやって作っていったらいいのか具体的なイメージが湧いてないと思うんですよね。

その具体的なイメージを仲間同士で共有するには、どうすれば良いでしょうか?

浅田

他の高校の応募作品を見るとすごく勉強になると思います。

今日の初戦審査会のように一堂に並べられている463校の作品を一つずつ見たら、こんなに差があるんだなとか、こういうアプローチの仕方があるんだななどとわかったと思うんです。だから、ブロック審査会からはYouTubeのアーカイブがあるので見てほしいと思います。それぞれどんな思いでどういうふうな作品を作っているかわかるから。

何を撮っていいかわかんないっていう人は他校の写真をしっかりと見れば「こういうアプローチの仕方があるんだな」と思うはず。身近な人を撮るというのもあるかもしれないし、街に出ていって撮るというのもあるかもしれないし、すごく迷宮的な写真の良さもありますし。いろんな写真作品が見られるので、そういうところから真似してみたり取り入れてみたりしてもいいんじゃないかなと。

野村

ブロック審査に選ばれている学校は多分、彼らなりに自分たちの物語をチームで作り上げてきていると思うんです。「私たちの物語」「僕たちの物語」って。今の時代に自分たちが感じている「これ見てよ」みたいな物語をやっぱり作り上げてきていますよね。

そういうオリジナルな物語を自分たちで写真表現としてどう作るのかっていうことを、ちょっと相談し合ってほしいなと思います。地域によって特性もいろいろあると思うんで。

小髙

5年ぶりの審査委員だったので、なにか変化があるかなといろいろ想像しながら会場に来たんですけど、いい意味で変わらない部分があるのと同時に、今回とても新鮮に見られました。

高校生ならではのテーマにもやっぱりいくつかのパターンがあると思うんですよね。モラトリアム的なことだったり、地域の伝統工芸や景色、日常の風景だったり。でも今回選ばれた作品を改めて一同に見ると、圧倒的に自分たちのカラーが出ているなと思いました。パターンのなかにあっても、何か新しい表現など何かもうひと工夫をしようっていうプラスアルファがある学校が選ばれたように思います。

鵜川

皆さん高校生でそもそも人生を生きている時間がまだ短いし見ているものも少ないから、テーマもそんなにバリエーションは多くはないと思うんですけど、やっぱり好きなことを見つけて、そこを追求していくっていうことが大事なことかなって思います。光ってくるのってそういう部分が大きいのかなって。題材としても自分たちは何が好きかというのがわかってないと作品にできないっていうことがあるかなって思いました。

小髙

写真甲子園は団体戦なので難しいと思うんですよね。正直、プロの写真家の方でも団体戦というのはすごく難しいと思うんですけど、それでも、全体の色調だったりトーンだったり、これが私たちのカラーだっていうところを相談し合って冷静に判断していくことが必要ですね。みんながそれぞれ好きに撮りましたみたいになると、独自のカラーが出にくくなっちゃうので、その辺は普段から相談しながらやっていくのが必要なのかなと思います。

野村

顧問の先生もすごく大変だとは思いますが、できるだけ高校生たちがやる気の出せるところにたどり着けるように導いていただければいいなとは思います。彼らが本気でやりたいテーマを見つけられたらなと。そこがまたいちばん難しいところかとは承知もしていますが......。

Keyword 04 「量」

野村 恵子 (写真家)

「もっと出したいのよ」っていうぐらいの勢いで(野村)

作品へのいろいろな向き合い方についてアドバイスをいただきましたが、来年に受けて普段からどんなことに取り組めば良いでしょうか?

小髙

ブロック審査会に進んだ学校は、量を撮っているんじゃないかなと思う。安定感もあるし、構図もちゃんとしているし、普段から撮っているなっていうのが目に見えてわかる作品が多かった。

逆に、選ばれなかった学校はすごい僅差で、本当に正直ちょっと差がつけられないぐらい僅差の学校が多かったと思うんですけど、そういう学校は本当に普段から量を撮っているのかな? と少し疑問に思う部分もありました。

野村

そうですね、応募は1組6〜8枚までとなっているんですけど、量を撮っていれば、やっぱり8枚ぐらいは出てくるんじゃないかなと思うんですよ。6枚とかになってくるとやっぱりちょっと弱いんですね。そこはもう本当は8枚以上「もっと出したいのよ」っていうぐらいの勢いで出していただけたらなと。

GOTO

もう一つは、組写真の構成ですよね。いい写真でも同じ距離感で続くと、意外と物語としては単調に見えてしまいますよね。距離感の変化だとか、絞りの数値などをちょっと工夫するだけで、限られた枚数の中での表現の自由度や幅が広がるんじゃないかなってことも感じました。良い作品っていうのは、そういうシンプルなことが積み重なってできているんだなっていうのは、改めて見て感じたことです。

浅田

7枚か6枚の作品でブロック審査会に進んだ学校ってあったかな。

鵜川

あんまりないと思います。

浅田

やっぱり8枚という、それぐらいの熱量ってことですよね。

GOTO

あと、作品と同時にタイトルも見るんですけど、タイトルが強すぎて、それに写真を合わせようとして苦しくなっちゃったかなと思う作品がありました。逆に、タイトルはシンプルなんだけど、その分解釈の幅が広くて写真が自由に読めたということもあったので、タイトルで限定しないというのも大事なんだなというのを今日の審査で感じました。

Keyword 05 「時間」

GOTO AKI (写真家)

時間をかけて量を撮ってプリントするっていう豊かな時間を(GOTO)

普段から量を撮るということ以外にもうひとつ、来年に向けてどんな準備をすれば良いか教えてもらっても良いでしょうか?

野村

浅田さんも去年すごくおっしゃっていたんですけど、できればプリントを頑張っていただけたらなと思います。そこはやっぱり顧問の先生の指導の力が大きいと思うので。

浅田

自分も高校の時はよく分からなかったです。構図のことやプリントの見方とか。3年間写真部だったけど......。

写真が上手な高校はすごくプリントが上手いよね。とても綺麗なプリントで大人顔負けのプリントというのもありますね。

鵜川

プリントも初戦をクリアするためのレベルになっちゃっているから、やっぱりやるしかないですよね。納得できるプリントだとか、色だとかもそうですけど。

GOTO

プリントの質ですね。スジが残ったまま提出されたプリントが気になりました。

撮影量が少ないのと日常的にプリントしていないっていうのが僕にはすごく近いことだと感じられて。多く撮って多くプリントするということは、昭和の根性論じゃ全くなくて、たとえば英語をやるにはまず英単語を覚えるとか、何かやるときに数量をこなすっていうのはすごく大事だから。あまり撮ってこなかったのであれば、もっと撮れば可能性は広がりますし。

残念ながらブロック審査会に進めなかった学校の作品を見ると、短い時間でなんとか撮ってプリントした、ギリギリで8枚出したなっていうのも感じたので、やっぱり時間をかけて量を撮ってプリントするっていう豊かな時間を高校生の皆さんにも求めていきたいな。

鵜川

「プリントする豊かな時間」っていいですね。

まだまだお話をおうかがいしたいところですが、最後におひとりずつ、来年に向けてのメッセージをお願いします。

鵜川

具体的なことを言ってあげたほうがいいのかなと思うので、「8枚出しましょう」っていうところから。

野村

まあそこ、基本問題かもですね。一枚ずつはいい作品があるのに、あとちょっとのところ、6枚で終わるのか......っていう物足りなさによって惜しくもブロック審査会に進めなかった作品、いくつかあったと思います。

小髙

今日選ばれた上手い学校っていうのは、何を撮ってもきっと上手いと思うんですよ。たとえばネジとか、何気ない題材、お題を与えられたとしても、きっと上手く撮るだろうなって思わせるものがあって。

本戦で北海道に来て、この人たちは面白いことをやってくれるだろうなって思わせる学校がブロック審査会に進んでいると思うので、普段からお題を考えて、いろんなジャンルで撮ってみるとか。漠然と、ただ技術的にうまく撮りましょうって言っても、とりとめもなくなっちゃうから、そういう訓練を普段からしておくと、想像力とか発想力とかがついてくるのかなと思います。

浅田

1日100枚撮るとか。

小髙

トレーニング的にいろんな題材で撮ってみるとか、そういうのもいいのかなと思います。

鵜川

普段やっていることをそのまま北海道でもやるチームが本戦で勝つことが多いと思うので、まさにそういうことですね。

GOTO

おそらく皆さんカメラやレンズをそんなにたくさん持っているわけではないと思うのですが、自分の機材の性能を理解しているかも大事なポイントですね。たとえばレンズの最短撮影距離だとか、もっと徹底的に知った上で、ここまで寄れるなってことを分かった上で撮るのはどうでしょう。

ブロック審査会に進んだ学校とそうじゃない学校の差って、三点保持でしっかり撮るなど基本的な丁寧さがあるかどうかが意外と分かれ道になったような気がします。

レンズだったら、AFも手ブレ補正とかの機能もしっかり使って、ぶらさないところはもうぶらさない。感度の設定も含めて基本的なことをちゃんとやると一気にクオリティ上がるなと思ったので、皆さんには徹底してやってほしいなって思います。

もう一つはプリントを当たり前にする習慣があるといいなぁと。普段やっていないけど、写真甲子園に応募するから急にプリントしたという学校もあったと思うんですよね。1ヶ月に1回とか2ヶ月に1回でもいいから、プリントして仲間同士で見合って話をするというのも楽しいと思うから、そういう時間を持ってほしいですね。

浅田

コンセプトやテーマは二の次で良いかもですね。まず写真を楽しんでいっぱい撮影することが大切で、その次に、じゃあこういうテーマで撮ってみようということでいいと思います。テーマに縛られて写真を撮っている高校が目立つので......。テーマに合わせて写真を撮るんじゃなくて、撮った写真からテーマが浮かび上がってくるまで撮影する。そんなことも頭に入れてみてください。

野村

残念ながらブロック審査会に進めなかった作品も私たちは全て、しっかり見させていただいています。写真甲子園に応募するということで、だれかに自分たちの写真作品を見せてやるんだということを一つの目標として作品づくりを続けていただけたらなと思います。

あと、私たち審査委員だけじゃなくて、関係者やボランティアの学生さんたちなど、たくさんの人が初戦の審査会場でしっかり応募作品は見させていただいていますので。来年も写真甲子園を目標に作品を作っていただけたらなと思います。

鵜川

私がいつも思いながらやっていることですけど、写真ってやっぱり、どれだけ手をかけたか、どれだけ面倒くさいことをやったかが、結構もうそのまま出てきちゃうと思うので。面倒くさいことを面倒くさいと思わずにどれだけやれるかだと思うので。とりあえずやってみて、その先に出来上がるものっていうものが絶対あるはずだから、そこを求めていってほしいなと思います。

来年に向けてたくさんのヒントをいただけたと思います。審査委員の皆さん、本日はどうもありがとうございました。